2025年5月、是枝裕和監督が iPhone16 Pro を用いて全編を撮影した短編映画『ラストシーン』が公開されました!
仲野太賀さん演じる主人公・倉田と、未来からやってきた孫娘・由比(由比福地桃子さん)が紡ぐ、未来と記憶の交差点をめぐる物語です。
皆さんはもうご覧になりましたか?
たまたま著者もYouTubeを見ようとしたところ、Appleのスポンサー広告がでていたので、速攻でクリックしてしまいました。『ラストシーン』は、Apple Japanの公式YouTubeチャンネルやApple TVアプリで無料で視聴可能となっているので嬉しい限りです。
この記事では、『ラストシーン』のネタバレを含めながら、
- 観覧車の象徴性
- 孫娘の役割
- テクノロジーと人間性
- 主題歌「まじで、サヨナラべぃべぃ」の意味
などを深掘りして考察します!
視聴前の方は、Apple公式YouTubeまたはApple TVでぜひ本編(約28分)を先にご覧ください🎥
出典:Apple Japan出典:
〓記事のポイント
- 映画『ラストシーン』のあらすじを簡単に紹介
- 観覧車シーンの意味を深読み
- 孫娘・由比の役割と未来
- 是枝裕和監督の新たな挑戦
- 是枝監督の代表作紹介
- 『ラストシーン』主題歌が作品に与える余韻
- SNSの感想や評判も一部紹介
映画『ラストシーン』あらすじとネタバレ結果考察
2025年に公開された『ラストシーン』は、
是枝裕和監督がAppleの「Shot on iPhone」キャンペーンの一環として制作した短編映画です。
作品概要
- 監督:是枝裕和
- キャスト:仲野太賀(倉田役)、由比福地桃子(孫娘・由比役)、リリー・フランキー
- 視聴方法:Apple Japan公式YouTubeチャンネル、Apple TVで無料視聴可能
あらすじ


鎌倉を舞台にしたタイムトラベル・ラブストーリー。
50年後の未来から孫娘・由比が現れ、脚本家の倉田に大きな選択を促す物語です。
倉田は何を失い、何を残すのか──観覧車が象徴的に登場し、
ラストシーンでは「未来に何を残すか」を問いかけてきます。
ネタバレ:考察① 観覧車シーンの象徴
本作のラストシーンで印象的なのが観覧車のシーンです。
高所からの眺めは、人生の振り返りと未来への希望を象徴しています。
物語のクライマックスで登場する観覧車のシーンは、時間の流れや人生の循環を象徴しています。
高所からの眺めは、登場人物たちの視野の広がりや未来への希望を示唆しているように感じられます。
- 時間の循環性
観覧車が回る様子は、人生のめぐり・記憶の繰り返しを示唆。 - 主人公の視点変化
孫娘と過ごす時間で、倉田は「失うこと」と「残すこと」の意味を受け入れます。
📌 著者が特に印象に残ったセリフ
「なにか失わないと、何かを手にできないから…」
「残したいな…未来にも」
「何を?」「観覧車さ」
思わず涙腺崩壊😭
考察② 孫娘・由比の役割
由比は50年後の未来からやってきた孫娘として、過去の倉田に人生の選択を迫るキーパーソンです。
彼女の存在が、過去と未来を架け橋でつなぐ役割を果たします。彼女の登場により、主人公・倉田は自身の選択と向き合います。
由比の問いかけは、
「自分が残したいものは何か」「何を選んで失うのか」 という普遍的なテーマを浮かび上がらせます。
人生の選択には必ず“何かを手放す勇気”が伴うこと。
観覧車がゆっくりと回るように、失うことが未来を動かす力にもなること。
未来からやってきた由比の存在は、失う痛みを抱えてでも大切なものを残せるのかを倉田に問いかけています。まさに、彼の脚本執筆は、何を失い、何を残すのかを形にする行為であり、観る私たちにも「自分なら何を選んで残すだろう」と考えさせる余韻を残してくれるのです。
最終的に、倉田は新たな脚本を完成させることで、未来が変わる兆しが描かれるのです。
考察③ テクノロジーと人間性の交差点
本作でリリー・フランキーさんが演じる二役には、テクノロジーの進化が人の営みにどう影響を与えるか、という是枝監督の問いかけが隠されています。
未来の世界では彼がロボットとして登場し、どこか滑稽でありながらも、便利さと引き換えに失われていく“人間らしさ”を私たちに突きつけてきます。
けれど同時に、変わりゆく時代の中でも人の心や記憶は生き続けるのだと、
その存在感を通して静かに語りかけてくれているようにも思えるのです。
著者は『万引き家族』にでていたリリー・フランキーさんがチョイ役かつ二役で出ていたので嬉しかったです。短編映画なので主人公以外はだいたいはチョイ役ですが、それでも二役というのが是枝監督の凄さなのか?(笑)
作品内で描かれる未来の世界では、テクノロジーによって失われるものや変化する価値観が問われます。テクノロジーが進化する中でも、
「人間らしさや感情の重要性」は「未来においても変わらない普遍的な価値」として描かれています。
ラストシーン 是枝監督の新しい挑戦
是枝裕和監督は、Appleの「Shot on iPhone」キャンペーンの一環として、iPhone 16 Proを用いて全編を撮影するという新たな試みに挑戦しました。この選択は、テクノロジーの進化と映画制作の可能性を探る、つまり「映画制作の民主化」と「リアルとテクノロジーの融合」という意図があったようです。
撮影監督には、是枝作品でおなじみの瀧本幹也氏が起用されました。
彼の豊富なカメラ知識と新しいことへの挑戦心が、iPhoneでの撮影においても高いクオリティを実現しています。
メイキングの中にはiPhone 16 Proの「シネマティックモード」「アクションモード」「写真」についても語られています。
特に是枝監督は本作品で「アクションモード」で速いスピードで走りながら撮影したシーンについて、通常の映画ならすごい機材が必要で費用もかかるところ、「手持ち」でいけてしまうことにショックを受けた、と語っています。
物語の舞台には、自然豊かな鎌倉が選ばれました。これは、日常生活の中にあるつかの間の瞬間や、当たり前だと思っている大切なものを描くための最適な場所として選定されました。
本作品はそんな日常の「小さな選択」「責任感」「冒険心」によって、どんな未来が作られていくるのか?観ている側も色々考えさせられる内容となっています。
【iPhone 16 Proで撮影 | ラストシーンの舞台裏 | Apple】のメイキングはコチラ!
是枝裕和監督の作品の紹介と特徴
さてここで是枝監督の代表作をご紹介しようと思います。
是枝監督作品は著者もほとんど観ていますが、、
著者が個人的に特に好きなのは「万引き家族」「怪物」で、前者は安藤サクラさんの演技に圧倒され😳、後者は物語結末の解釈で頭がフル回転した記憶があります😁
公開年 | タイトル | 主な出演者 | 受賞歴・注目ポイント |
---|---|---|---|
1995年 | 幻の光 | 江角マキコ | ベネチア国際映画祭 金のオゼッラ賞 受賞 |
1998年 | ワンダフルライフ | ARATA(井浦新) | ロカルノ映画祭などで高評価 |
2001年 | ディスタンス | ARATA、浅野忠信 | カンヌ映画祭 コンペティション部門出品 |
2004年 | 誰も知らない | 柳楽優弥 | カンヌ国際映画祭 最優秀男優賞(柳楽) |
2008年 | 歩いても 歩いても | 阿部寛、樹木希林 | リアルな家族の日常を描いた名作 |
2011年 | 奇跡 | 前田航基・前田旺志郎 | 子ども視点の瑞々しい物語 |
2013年 | そして父になる | 福山雅治、尾野真千子 | カンヌ審査員賞受賞・国内外でヒット |
2015年 | 海街diary | 綾瀬はるか、長澤まさみ | 鎌倉の四姉妹を描く繊細な作品 |
2016年 | 海よりもまだ深く | 阿部寛、樹木希林 | 夢を追えなかった大人の切なさ |
2018年 | 万引き家族 | リリー・フランキー、安藤サクラ | カンヌ最高賞 パルム・ドール受賞 |
2019年 | 真実(La Vérité) | カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ | フランス初制作作品 |
2022年 | ベイビー・ブローカー | ソン・ガンホ、IU | 韓国で撮影 カンヌ主演男優賞(ソン・ガンホ) |
2023年 | 怪物 | 安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢 | カンヌ脚本賞(坂元裕二)受賞・是枝が監督 |
著者は、是枝監督の作品は、「家族とは何か?」というテーマを一貫して描いているように感じます。
血縁関係ではなく、共に過ごす時間や感情の共有に重きを置く姿勢も特徴です。
そこには、是枝監督の『家族をめぐる問いかけ』があるように感じます。例えば「万引き家族」では血のつながりがない人々の疑似家族を描写しており、ユーモアとシリアスが混在する内容となっていました。
また、『誰も知らない』『奇跡』『怪物』など、子どもを中心にした作品が多く、彼らの繊細な感情や行動をリアルに描いています。特に『怪物』には成長期の子どもの心と身体の変化も描かれており、子どもの視点を大切にする姿勢を感じます。
※是枝監督の一部作品は現在Amazon Prime Videoでも視聴可能です。
是枝監督はもともとテレビのドキュメンタリー番組(NHK『NONFIX』など)の出身の方のようなので、リアルな演出、自然な会話、即興的な演技を重視しているようです。各作品の名演技もここから生まれてきているのでしょうかね?撮影時にはセリフ(台本)を渡さず、俳優がその場で反応するように演出することもあるようなので、俳優さんも大変だと思いますが。。
またドラマチックな展開よりも、日常の静かな場面、間(ま)、空気感に重きを置くようで、長回しのカメラ、引きの画、無音の使い方が上手く、感情を観客に委ねるスタイルのようです。静けさと余白を活かす演出が特徴とも言えますね。
社会的な問題意識を投げかける作品もあり、現代社会のひずみや矛盾(貧困、児童虐待、格差、血縁主義など)を作品に織り込みながらも、説教くさくせず、観る者に考えさせる形で提示しています。
日本の多くの監督の中でも是枝監督は、アジアやヨーロッパで非常に高い評価を受けています。
特にカンヌ映画祭では常連であり、日本映画界で黒澤明以来の世界的存在と見なされることもありますね。
映画ラストシーンの主題歌「まじで、サヨナラべぃべぃ」の役割
本作の主題歌「まじで、サヨナラべぃべぃ」は、Vaundyが書き下ろした楽曲です。
タイムトラベルというテーマにインスピレーションを受けて制作されました。
※出典:Vaundy オフィシャル
楽曲の歌詞は、物語のテーマや登場人物の心情と密接にリンクしていて、
『これから君の生きる日々を彩っていくよ サヨナラべぃべぃ』
「未来に進むためには別れを受け入れなければならない」という、この物語と重なる切なさが込められています。倉田が大切なものを失いながらも新しい脚本を書き上げ、孫娘と共に“未来に残したいもの”を選んだ姿と重なります。
別れの言葉なのに前を向ける優しさが、観る人の心にも「自分は何を残して生きていくのか」を問いかけてくれるのです。
主題歌「まじで、サヨナラべぃべぃ」は、作品全体の雰囲気を高め、感情の深みを加える役割も果たし、音楽と映像が一体となることで、この作品に対する強い印象を残しています!
おわりに
「プレミア試写会」の出演者インタビュー
2025年東京都内で行われた「プレミア試写会」のインタビュー(出展:moviecollectionjp)の様子が公開されています。是枝裕和監督、仲野太賀さん、福地桃子さん、リリーフランキーさん、黒田大輔さんが登壇されました。監督や演者さんがi-phoneでの撮影エピソードやこの作品への想いを語っていますので、こちらもご覧になると更にこの作品の魅了や面白さが伝わってくると思います。ぜひ見てください!
出展:moviecollectionjp
ラストシーンSNSの評価と考察まとめ|未来に残すものは何か?
(2025年7月追記)
5月に最初にこの記事を書いた後、YouTube、SNSでは、この作品を観た方から以下のような多くの肯定的な感想が溢れていました。
・「観覧車のシーンで泣いた」
・「iPhoneでここまで撮れるとは!」
・「是枝監督らしい余白のあるラストが良い」
一方で、以下のようなという声も一部で見かけます。
「短編だからプロットが物足りない」
「是枝監督にしてはメッセージが弱い」
この作品の真価は、わずか28分という短編映画という制約の中で、“何を失い何を残すか”“失った過去をどう受け入れて、未来をもう一度選び直せるか”という問いかけまで静かに含んでいるところにあります。
夢を諦めた主人公が、未来から来た孫娘に背中を押されることで、後悔を抱えた自分ごと過去を許し、
新しい物語を書き直していく姿に、多くの人が心を動かされ、映像美と最新テクノロジー、そして是枝監督らしい“余白”が合わさることで、受け取る側の数だけ答えが生まれる──
そんな自由さと深さこそが『ラストシーン』の魅力、と著者は思います。
だからこそSNSには、このような声が絶えないのでしょう。
「短いのにずっと心に残る」
「自分なら何を選び直すだろうと考えさせられた」
プチ情報ですが、ラストシーンで登場しているファミレスは「ガスト」だって皆さんご存知でした?
著者は最近Xで知りました😁
「チーズINハンバーグ」が未来でも愛されていて喜んでいる投稿が、なんか微笑ましいですネ!
さてさて、ラストシーンを観終わった皆さん!
「あなたはどんな未来を選び直したいですか?」
この記事のまとめ
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